LOVEさぬきさんリポート LOVE SANUKISAN REPORT

讃岐路に春風が吹けば、海ものどかに波打ち、野山ではため池が輝きます。押し寿司にのったサワラ、美しく焼き上がった桜鯛、ピクニックのランチに入れる空揚げにもおすすめの讃岐でんぶく(ナシフグ)と、春の海は恵みにあふれ、山菜、タケノコ、イチゴにナバナ、春キャベツに春レタス、やがてグリンピースにソラマメと、野山もごちそうの宝庫。そんな旬のおいしい産物と花の風景が誘う香川の旅。今回は、そんな春景色の讃岐路で、県の南西部にある「まんのう町」を訪ねます。

春の野遊び山歩き

「まんのう町」は、山菜がたっぷり採れる旧琴南町、タケノコの名産地旧仲南町、池の土手に桜並木が美しい旧満濃町が合併して、平成18年の春に誕生しました。
春のまんのうは、花の風景があちこちに広がります。日本一のかんがい用のため池「満濃池」周辺も山並みも塩入温泉も桜色に染まり、れんげ畑やツツジの鮮やかさ、可憐な芝桜や公園のチューリップも色鮮やかに人々を誘います。このエリアは塩入温泉や美霞洞(みかど)温泉と泉質の良い温泉もあり、春の野山を散策した後は、温泉につかっておいしいものを食べるのもおすすめです。

まんのう町の観光 問い合わせ:まんのう町商工観光課 電話 0877-73-0122

日本一の満濃池

まんのう町のランドマークは満濃池。香川県を代表する歴史遺産、讃岐のシンボルでもあります。貯水量1,540万立方メートル、香川県では約1万6千、全国には約22万あるというため池のなかでも、かんがい用としては日本一を誇るため池の王様です。
「萬農池後碑文」によると大宝年間(701年~704年)に創築されたため池は、弘仁9年(818年)に決壊。なかなか改修がならず、ここでいよいよ弘仁12年(821年)、弘法大師・空海が登場します。空海のもとに続々と人々は集まり、唐で学んだ土木学を生かして、わずか3ヵ月足らずで周囲2里25町(約8.25km)面積81町歩(約81ha)の大池が完成。
その後何度も決壊と修築を繰り返しますが、昭和34年(1959年)についに完成し、現在の満濃池の規模となりました。讃岐山脈を背景とした 四季折々の池の風景は風雅の趣もあり、特に6月13日に行われる「ユル抜き(田植えのための放水)」には、大勢の見物人が押し寄せます。

しあわせ願う満濃池のうどん

「春の満濃池は、春霞がたなびくように桜の花に包まれます。ここからまんのう公園までの道は桜ロードとして、桜の花がずっと植えられて、対岸の山桜もそれは見事でね」と教えてくれたのは、満濃池のほとりにある「かりん亭」のお母さんたち、まんのう町生活研究グループ協議会の満濃グループのみなさんです。満濃池に訪れるみなさんに、ほっとくつろげる休憩場所、おいしいものをお出しする昼食場所を提供したいと、「かりん亭」のお世話を始め、この春で7年目を迎えます。

「ここは、日本一の満濃池を自分の庭の池のように眺められますから最高の場所です。ひととき、ゆっくりと眺めていくお客さんも多いんですよ」という「かりん亭」の名物は、「ヤーコンうどん」。ヤーコンは、南米アンデス地方の根菜。約15年前に旧満濃町でも栽培がはじまり、健康野菜として一躍有名になりました。このヤーコンを練り込んだうどんは、塩分ゼロなのに、ちゃんとコシがあって、低カロリーの健康うどんになるのです。
ところで、弘法大師・空海さんは、唐の国から「かりん」の苗を持ち帰ってきて、この地にはじめて植えたと伝えられています。そこから、「かりん」は町木となり、植栽もされました。毎年、実を付ける秋には「かりんまつり」も開催されています。また、空海さんは「小麦」や「うどんの製法」も唐の国から持ち帰ったという伝説があり、満濃池のほとりで、みなさんにうどんを味わっていただきたいと思いつきました。しかし、うどん店激戦区の満濃エリアで、素人のお母さんたちが普通のうどんで勝負しても後発では勝ち目がないと、考え出されたのが「ヤーコンうどん」でした。おみやげや通販でも手に入るヤーコンジャムやヤーコン焼き肉のたれ、ヤーコン半生うどんも用意されています。

満濃池を眺めながら、“まんでがん かあちゃんの手打ちうどん「かりん亭」”で、 民衆の幸せや健康を願い、かりんや小麦を持ち帰った空海さんの心を伝える「ヤーコンうどん」を味わってみませんか。

問い合わせ:かりん亭 電話 0877-75-3333(水曜定休)

ボランティアガイド&日曜市

「かりん亭」のすぐ上には、休憩・研修施設の「かりん会館」もあり、ここからの満濃池のながめも格別です。また、ここはまんのう町文化財保護協会の会員などがメンバーになっている「まんのう池コイネット」の拠点でもあり、満濃池周辺のボランティアガイドをお願いすることができます。  日曜日には、「かりん亭」の下で「かりん市」が開催され、新鮮な季節の農産物なども並んでいます。

ボランティアガイドの申し込み:かりん会館 電話 0877-75-0200(水曜定休)
*かりん亭・まんのう町商工観光課でも受け付けています。

タケノコ名産地の名物たち

満濃池から今度は旧仲南町のエリアに向かいます。この一帯は、竹林が多く春にはタケノコの名産地として知られています。そうしたタケノコが季節には店頭にずらっと並ぶのが、国道32号沿いにある道の駅「空の夢もみの木パーク」の「仲南産直市」。地元でとれたお米やお茶、新鮮な野菜や果物、花々も並び、遠くからも買い物客が訪れています。

ここで一年中手にはいるのが「仲南しゃっきり竹の子」と名付けられた穂先タケノコ。地上2mくらい伸びたタケノコの穂先の部分で、普通のタケノコより香りがあり、シャキシャキした食感が特長。くせになる食感で、こちらの方が好きだという常連客さんも多いそうです。そして、3月末から5月末ころまではタケノコの旬。掘りたてで柔らかく、香りの良いタケノコが店頭で待っています。

ここは、ほかでは食べられないアイスクリームがあることでも有名。季節限定の春のツツジや夏のひまわり(花びら)というメニューまであります。定番では、マロンや黒ごまきな粉、そしてひまわり(種)。仲南エリアは夏にひまわり畑が広がることでも有名で、ビタミンEを豊富に含む「ひまわり油」も販売されています。そこから誕生した「ひまわり石けん」も人気商品のひとつです。2月ころには梅林も美しい地で、「梅肉エキス」・「梅ジャム」も販売されています。店内には、レストランもあり、タケノコの入った竹取うどんや竹取弁当も味わえます。近くには、この峠で飛行原理を発想したという偉人にまつわる二宮忠八飛行館や二宮飛行公園があります。

問い合わせ:仲南産直市 電話 0877-75-1994

竹炭の健康製品

仲南の竹林から、もう一つの特産品が誕生しました。それは、「農業生産法人(有)四国テクノ」の竹炭粉や竹酢液です。その昔は金毘羅さんのすぐ近くでとれるタケノコは「こんぴらたけのこ」と呼ばれ、高値で飛ぶように売れていました。ところが中国からの輸入品などにより、最盛期の100分の1に売上が激減。このままでは、後継者不足に陥り、竹林は荒れ放題になってしまいます。そこで、どうにかこの竹を生かせないかと考え出したのが、竹炭、竹酢液という製品でした。それを生産するための連続竹粉炭竹酢液製造施設を設置。平成7年に創業し、1日6トンの原料処理を始めました。
最初は、土壌改良剤や植物改良剤として売り出しましたが、先行して商品化されたものが多く販売が伸びず、次に脱臭剤、健康枕などに取り組み、現在は家畜の飼料として順調に販売エリアを拡大しています。竹炭や竹酢液は昔から整腸作用があることで知られています。これを飼料に混ぜれば、家畜くさくなくなり、上質の卵や肉に仕上がります。また、竹炭は、有害物質を出さない健康的な外壁材として、カラー漆喰などにも使われています。

問い合わせ:農業法人(有)四国テクノ 電話087-777-2331

讃岐のかくれ湯

県道4号線を阿讃山脈に向かってどんどん進めば、野口ダムの近くに塩入温泉があります。鎌倉時代、高野山の道範阿闍梨が、尾の瀬山で修行の途中、この地に立ち寄った時に発見された湯と伝えられています。泉質はナトリウム-炭酸水素塩冷鉱泉(弱アルカリ性低張性冷鉱泉)、効能は神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・冷え性・痔疾・病後回復期・疲労など。自然豊かな温泉で、心底疲れがとれるようです。また施設内には、ひまわり製品などのお土産を置いた物産コーナーや地元のお母さんの味を楽しめる食事どころ「清流亭」があります。この温泉のすぐとなりにあるのが、「塩入ふれあいロッジ」。おしゃれなロッジで、リーズナブルに別荘気分を味わえます。

問い合わせ:塩入温泉 電話 0877-78-3363(水曜定休)
問い合わせ:塩入ふれあいロッジ 電話 0877-78-3837

うどん銀座?

続いては、ふたたび旧満濃町エリアに帰ってきます。まんのう町は香川県一の麺どころと言ってもよい町。満濃池の近くは、地元の人が「うどん銀座」と呼ぶほど、有名店が多くあります。しょうゆをかけてうどんを食べるという、うどんそのものがおいしい讃岐ならではの食べ方を、全国的に有名にした店もありますよ。

スイーツのお城

しょうゆうどんの店近く、週末には駐車場係が登場するスイーツの人気店「西内花月堂」があります。地元のフルーツなどにこだわり、オリジナリティあふれる上質のスイーツを作り続けているお店で、一画にはパン店や花屋さんもあり、甘い香りが漂うリトルテーマパークのようになっています。
ここでの春の一押しは、まだ誕生して間もない香川県産オリジナル品種のイチゴ「さぬきひめ」を使ったスイーツの数々。「さぬきひめ」は甘くジューシーですが、それだけに果実がやわらかくケーキなどに扱うにはなかなか大変です。しかし、花月堂さんは、素材を大切に生かしたお菓子作りを行っていますので、「さぬきひめ」もステキなお菓子のプリンセスに仕上げてくれました。定番のイチゴショート、イチゴのミルクゼリー、イチゴ大福もショーケースに並び、ホールケーキにもたっぷりイチゴが使われています。ほかにも、お米のカステラなど、花月堂さんならではのスイーツに出合えます。敷地内にはカフェもあるのでティータイムはもちろん、ランチにもおすすめですよ。

問い合わせ:西内花月堂 フリーダイヤル0120-793-307電話 0877-79-3307(火曜日定休)

広大な花の公園

続いては、ふたたび満濃池の近くに戻り、「国営讃岐まんのう公園」を訪ねます。満濃池を見下ろす自然豊かな丘陵地に四国で初めての国営公園としてオープンし、「人間との語らい、自然・宇宙とのふれあい」がメインテーマ。テーマも敷地もビッグな公園には、中央広場、宿泊、自然活用、環境保全の4つのゾーンがあります。宿泊ゾーンの「ホッ!とステイまんのう」には、四国最大級のオートキャンプ場があり、ログハウスのキャビンでは広いテラスでバーベキューも楽しめます。とても人気が高く、すでにゴールデンウィークは満室状態とか。

■花のイベント

広大な公園には広い芝生広場や美しい花壇があちこちに広がり、春には花のイベントも次々と開催されます。平成20年3月1日(土)~3月19日(水)まで開催されるのは「早春フラワーフェスタ」。花竜の道を中心に、クロッカス、ビオラ、早咲きスイセンなどの花々が咲き誇り、土・日を中心にキャラクターショーやフラワークイズラリーなどが行われます。
平成20年3月20日(祝)~4月13日(日)は、「スイセンコレクション」を開催。四国最大級、125種24万本のスイセンが、飛竜の花道を中心に咲き誇り、土・日・祝日を中心にキャラクターショーなどが開催され、スイセンの楽しみ方を紹介するスイセンガイドも行われます。
その後は、平成20年4月19日(土)~5月25日(日)にかけて「春らんまんフェスタ」が開催され、ゴールデンウィークもビッグイベントがめじろ押しです。

■体験メニュー

まんのう公園では、さまざまな体験メニューも用意されています。園内のハーブを使ってドライフラワーなどを作る「ハーブ教室」・間伐材などを利用して本立てなどを作る「木工教室」・春の風物誌「たけのこ掘り」・園内の自然観察をする「ガイドウォーク」・竹細工などを行う「里山伝承体験」など、多彩なメニューの内で、幾つかが土日祝日と開催されています。(団体は平日も予約可能)

問い合わせ:まんのう公園管理センター 電話0877-79-1700
問い合わせ:オートキャンプ場「ホッ!とステイまんのう」 電話 0877-79-1717
■桜と森にうっとり

満濃池の近くには、春の花を楽しめるもう一つの広い公園があります。「県営満濃池森林公園」。遊歩道をはじめ森林学習展示館、森林の館、野鳥の森、トリムコースなどがあり、森林浴やバードウォッチングと、自然を満喫することができます。桜並木、コブシ、レンギョウ、ユキヤナギ、オンツツジ、フジと春は花の姿にもうっとりします。

問い合わせ:県営満濃池森林公園 電話 0877-78-3364

木工にチャレンジ

続いては、満濃エリアから琴南エリアへと向かいます。まんのう公園からは北口に出て、土器川沿いの国道438をひたすら徳島(美馬市)方面へと走ります。森林公園からは、仲南側に出れば山の中に琴南に抜ける大規模農道があり、国道438につながっています。国道に出てしばらく走ると、県道108号線との交差点の手前、国道と平行に走る旧道から少し山に上がったところにチャレンジセンター「いきいき館」があります。金・土・日曜日に予約により、木工クラフト体験ができます。とてもリーズナブルな材料費で、トールペイントや木工クラフトの設備も使えます。

問い合わせ:チャレンジセンター「いきいき館」電話 0877-84-2533(金・土・日予約制)

温泉とそばの聖地

さらに国道を進めば、見えてくるのが民間の温泉宿泊施設「ビレッジ美合館」。コテージもあり、レストランや足湯もあって日帰りの温泉も楽しめます。この手前には民家で、手打ちそばを味わえる「おいで家」もあります。さらに国道を進めば、道の右側、川辺に下りたところに「美霞洞温泉」があります。
ここは、200年の歴史ある湯で、讃岐が生んだ江戸時代の発明王・平賀源内も絶賛した名湯。江戸で開催された薬品会に、この温泉の水を出品し、著書のなかでは白い乳のようなお湯で、やけど薬として珍重しているというふうに紹介しています。春には桜に包まれる「美霞洞温泉」。周辺は美霞洞渓谷の景勝地です。宿泊でも日帰りでも楽しめます。

問い合わせ:美霞洞温泉 電話0877-84-2211

温泉のある道の駅

「美霞洞温泉」の泉質はアルカリ性低張性冷鉱泉。効能は、神経痛、冷え性、慢性皮膚病、慢性婦人病、痔病など。この湯を源泉として、楽しめる温泉施設が、「美霞洞温泉」の先、三頭トンネルの手前にある「エピアみかど」です。ここは、道の駅でもあり、香川県(坂出IC)と徳島県(美馬IC)を結ぶ要所として、多くの皆さんが立ち寄ります。「エピアみかど」の“エピア” はエンジョイとピープルの二つの言葉を合わせた造語だそうで、ここには温泉施設、レストラン、物産コーナー、産直市、情報コーナーなどがあります。
温泉には、ジャクジーやサウナもあり、休憩コーナーも広くてきれいで人気があります。シャンプーやボディソープも浴室にあるので、気軽に立ち寄れます。ギャラリーや水に浮かぶ石舞台もあり、ときにはコンサートに出合えることも。 レストランでは、地元の素材を使った定食やそば、アユなどが味わえ、お風呂上がりにおいしいものが楽しめます。

エピアのおみやげ

物産コーナーには、地元の製品もたくさんあり、チャレンジセンター「いきいき館」で作られた木工製品も売られています。また、「きなこソフト」などのソフトクリームも湯上がりにおすすめです。 そして、琴南といえば岩豆腐(いわどうふ)で有名。山里の豆腐は、腐りにくく崩れにくい豆腐でなければ、遠い山道を持って帰れません。そこで縄で縛って帰れるという「岩豆腐」が名物となりました。旧道沿いの豆腐店は店じまいしたところが多く、このままでは琴南の豆腐がなくなってしまうと、地元のみなさんが立ち上がり、チャレンジセンター「いきいき館」で豆腐づくりを始めました。まだ暗い内から山道をたどって集まってくるみなさん。心を込めて作り上げた豆腐は、おあげ、おからと一緒に「エピアみかど」のショーケースに並んでいます。

おすすめしし肉

「エピアみかど」のレストランや物産館で、昨年秋に新発売された注目の品が「ぼたん鍋」。お土産では「阿讃しし肉」と「特性ぼたん鍋つゆ」がセットになっていて、みその風味にいくらでも食べられるおいしい鍋が出来上がります。くさみがなくほどよい弾力で、しし肉(いのししの肉)のおいしさに目覚める人も多いことでしょう。