LOVEさぬきさんリポート LOVE SANUKISAN REPORT

暑い夏が過ぎ、秋風が心地よい季節の到来です。芸術の秋、スポーツの秋、食欲の秋、そして祭りの秋がやってきます。今回は、香川県の秋祭りのなかでも全国的に知られる「ちょうさ祭」で有名な、『観音寺市豊浜エリア』を紹介します。

祭の秋がやってくる

香川県の西南端に位置する豊浜エリアは、燧灘(ひうちなだ)に面し、弧を描くように長い海岸線が続いています。まさに歴史も文化も自然も豊に広がる浜があるのが「観音寺市豊浜町」なのです。
このエリアの自慢は、なんといっても10月の第2日曜日を最終日とする金・土・日の3日間にわたって開催される「ちょうさ祭」。農村景観百景にも選ばれた華麗で勇壮な祭りで、この祭りのために一年間がんばって働くという人々も多いのです。また、豊かな浜は、昔から綿(わた)の産地として知られ、最近はおいしい梨(ナシ)の生産地としても知られています。それでは、「ちょうさ祭」に向けて盛り上がる豊浜エリア、おいしい話題も交えてめぐっていきましょう。

香川の西の玄関口と一の宮公園

JR予讃線の豊浜駅や箕浦駅がある豊浜。高速道路を利用するならば、大野原インターが降り口となります(愛媛方面からは川之江三島IC)。
それではまず、豊かな浜のシンボル「一の宮公園」に向かいます。古くから白砂青松の遠浅海岸として親しまれ、海水浴のメッカでもあった一の宮海岸。8年余りの歳月をかけて2000年(平成12年)に新たに生まれ変わりました。新しくビーチハウスや広大な芝生広場、野外ステージなどが設けられ、さらに快適な海水浴場として整備されました。もちろん、秋になってもここを訪れる人は大勢います。キャンプ場やテニスコートもあり、何より芝生広場がとても気持ちが良いのです。その中央には、「一の宮ドリームタワー」と名付けられた時計塔があり、この間に沈む夕陽の美しさが評判になっています。

問い合わせ:観音寺市豊浜コミュニティセンター(海の家) 電話0875-52-6640

「ちょうさ会館」で会いましょう。

 

一の宮公園から、国道11号に出て東に向かうと、すぐに道の左側に「ちょうさ会館」の看板が見えてきます。ここでは、一年中「ちょうさ祭」にふれることができ、祭に登場するちょうさや御輿、獅子舞、座船などが、実物や模型、パネルや迫力あふれる300インチスクリーンで紹介されています。
「ちょうさ」とはいわゆる太鼓台のことで、大きい物は高さ約5メートル、重さ約2トンもあります。これには、豪華絢爛たる刺繍が施されていて、神の敷物を重ねたという七重(しちじょう)の側面に、金色に輝く上り龍や下り龍が輝いているのです。その上には、雲を表現するという蝶結びにしたとんぼ。八つの房が動く度にゆれ、その下には金糸銀糸で虎や龍の図柄が美しく刺繍をされた掛布団があり、これはまさに神様の寝具です。

眺めているだけでも、歴史の美術品を見るようなときめきを感じる「ちょうさ」。祭りの日には、これが20数台も勢ぞろいして、かきくらべをくり広げたり練り歩いたりというのですから、そのあでやかさ、その迫力に圧倒されてしまいます。

問い合わせ:ちょうさ会館 電話 0875-52-5500(資料館も同じ)

秋の3日間に酔いしれる

感動のちょうさ祭が開催されるのは、10月の第2日曜日を最終日とする金・土・日の3日間。初日の金曜日は、午後から町内をめぐり、豊浜八幡神社に宮参りします。続く土曜日は、100個余りのちょうちんに照らされたちょうさによる“音と光のパレード”が繰り広げられます。秋の宵闇に浮かぶちょうさの明かりは幻想的にゆれ、広場は心地よい興奮に包まれるのです。そして迎える最終日、ちょうさ祭一番の見どころ、“かきくらべ”が一の宮グラウンドで開催されます。そして、19時からは豊浜八幡神社でちょうさ祭最後の見せ場“おいり”が行われ、ちょうさ祭のフィナーレを飾ります。
交通規制や細かい地図などもありますので、ちょうさ祭のホームページ(http://www.chohsa.jp/index.htm)ものぞいてみてください。

問い合わせ:さぬき豊浜ちょうさ祭実行委員会 電話0875-52-1205

棉(わた)づくりの歴史を伝える

 

「ちょうさ会館」の隣に小さな資料館があります。ここ「豊浜郷土資料館」には、綿(わた)をつむいだ道具や綿づくりの歴史、なつかしの民具などが集められています。江戸時代、塩・砂糖とならんで讃岐三白の一つに数えられていたのが綿。豊浜での綿の歴史は古く、鎌倉時代に関谷兵衛国貞が、現在の関谷地区を開墾して棉(わた)の木を植えたことに始まります。

棉の栽培は昭和のはじめころまで続き、綿打ち職人が腕をふるっていたそうです。そのため、高須賀夕映え公園の南の浜に、関谷兵衛国貞をまつった全国でも珍しい「わた神社」もあります。また、資料館のかたわらには、実際の棉(わた)が栽培されていて、季節には白い花が咲きます。

やさしく温かい綿寝具

 

豊浜は、綿製品四国一の生産量を誇り、製綿工場や綿製品を販売する店が幾つもあります。国道11号には「わたの街通り」という看板が立っているほどです。そこで、「豊浜綿寝具協同組合」の松村理事長を訪ねました。20年前は20数件の店舗が協同組合に加入していましたが、今では12軒にまで激減してしまったそうです。「当然、作られる布団の総枚数も減ってきていますよ。それでも、綿の布団でないと熟睡できないと、根強いファンも多くいます。綿は重いと思われていますが、好みに合わせて軽くできますよ」と語ってくれました。また100%植物性であるため、アトピー性のお子さんが綿の布団でないと眠れないという方もいらっしゃるのだそうです。それに、打ち直しが何度でもできるので、何代も使われてきた布団も持ち込まれます。

大きな布団を縫うのは大変だろうと伺ったところ、大きな機械の前で準備を整え、あっという間に布団の生地を縫いつけてくれました。もちろん、ふさをつけるなどの面倒な部分もありますが、ここでは大きな工場と違って、一枚一枚、ていねいに布団が作られています。作る人のハートも手ざわりも、やさしく温かい豊浜の綿寝具でした。

問い合わせ:豊浜綿寝具協同組合事務局 電話0875-52-5487

嵐を乗り越えた「もったいない精神」

豊浜の特産品はほかにもあります。明治42年に栽培が始まったという「梨(ナシ)」。春先には丘の上に真っ白い梨の花が広がり、8月から9月にかけては梨の直売所も設けられ、おいいしい梨を買い求める人の姿でにぎわいます。甘くてみずみずしい豊浜の梨は、一年中は楽しむことが出来ませんが、年間を通じてそのおいしさを伝えるものがあります。それが梨の加工品です。
作っているのは、「豊浜町梨加工研究会」のお母さんたち。そこで、研究会の横内十三枝初代会長と川上フミ子現会長にお話を伺いました。会の始まりは、平成3年(1991年)のこと、台風の後に地面に落ちた果実を見た横内さん、精魂込めて育て上げた梨が、ただのゴミになってしまう悲しさ悔しさに、思わず「もったいない!」と叫んだのでした。これは、ゴミにしてはいけないと一念発起し、仲間で力を合わせ、試行錯誤をくりかえし、梨の漬物を作り始めました。また、おいしい果実を育てるには摘果という作業が必要です。そのため、台風が来なくても捨てられてしまう果実はたくさんありました。

材料にはことかかなかったので、毎晩、農作業や家事を終えたお母さん達が、夜の8時ころから集会場に集まって、話し合いながら漬物づくりを進めたそうです。その漬物をテレビで紹介したところ、デパートから早速に電話があり、本格的な商品化が実現しました。梨の漬物は、シャキシャキとした歯触りが最高で、おかずやビールのおつまみにひっぱりだこ。この漬物でなくてはいけないと遠くからも注文が来るそうです。その後は、一年中梨の実が楽しめる缶詰、のどが痛いときにもおすすめのジュース、まろやかでうま味のある焼き肉のたれ、さっぱりと甘いジャムやゼリー、染め物、梨ワインなどなど、どんどん製品を増やしていきました。
今年は、初夏の雨続きで梨の実の収穫量が少なく、取材の日にはすでに梨の漬物「ちょうさ漬」が売り切れていました。実は、写真はパッケージだけ。これらの製品の一部は、「道の駅とよはま」・「道の駅ことひき」・「香川豊南農協和田支所」で買うことができます。
お二人のお話を伺う内に、豊浜の梨農家のみなさんは、2004年の台風被害で3分の1から半分の梨畑を失ったことを知りました。「もうこれで終わりや」とつぶやいたご主人も多かったそうです。でも、お母さんたちは前向きに、明るさを失わず梨づくりと梨の加工品づくりを行ってきました。苦労を乗り越えたお母さんたちの梨の味は、一段と輝いているようです。

問い合わせ:香川豊南農協和田支所 電話0875-52-2154

日本でただ一つのお菓子

国道11号沿いにある百十四銀行の角を山に向かって入り、最初の角を右に入っていけば、その道がその昔の伊予街道です。今は、車が一台通るのがやっとといった細い道ですが、江戸時代にはメイン道路としてこんぴら参りに出かける人やお遍路さんがにぎやかに行き交っていたのでしょう。この道に入って2つ目の角を今度は国道の方に曲がると「甘味堂(かんみどう)」が見えます。ここには、日本でもここだけの味ではないかといわれている菓子「梅が枝」があります。九州の太宰府天満宮には梅ヶ枝餅という焼き餅のお菓子がありますが、ここの「梅が枝」はそれとは全く違い、もち米と砂糖、そしてニッキを使ったお菓子です。

あえていうなら京都の八つ橋に近い味。江戸時代に、京都の名僧が四国巡礼の途中で病に倒れ、家人に手厚い看護を受け、そのお礼に製法を伝えたといわれています。現在は3代目の大西孝則さんが、その製法を4代目に伝えているところだそうです。この「梅が枝」、固くなってしまったときには、焼いたり油で揚げたりしてもおいしくいただけるそうで、油で揚げたものは食べ出したら止まらなくなりました。店の前には、こんぴら灯籠(どうろう)があり、旅人の変遷を見つめてきました。その昔はこんぴら参りのみやげ物として評判を呼んでいた「梅が枝」です。

問い合わせ:甘味堂 電話0875-52-3496

故大平総理をしのんで

豊浜の有名人といえば、昭和53年(1978年)に内閣総理大臣となった大平正芳氏です。大平氏は、明治43年和田村長谷、大平利吉氏の三男として生まれました。「信頼と合意」による内政、外交を展開して、世界に大平の名を知らしめましたが、昭和55年衆参同時選挙の最中に突然、病に倒れました。今でも、地元には大平氏を慕う人が多く、国道11号の一部は「大平記念通り」と名付けられ、豊浜支所の隣にある中央公民館には「大平記念館」という一室が設けられています。

大平記念館からそう遠くない国道沿いに、ちょうさ祭でも知られる「豊浜八幡神社」があります。ここに大平総理の銅像がそびえています。この神社は、和銅元年(708年)に創祀された由緒ある神社で、境内には香川県の保存木に指定された木々の緑が広がっています。

神社の前の菓子店

豊浜八幡神社の正式な参道は、国道側ではなく旧道側にあり、その入り口前にあるのが「南樟堂(なんしょうどう)」。大正時代に店開きをした、この店は旧道(伊予街道)沿いにあって、その昔は法事のお菓子やお祝いの饅頭などを作っていたそうです。3代目になってから、創作菓子を意欲的に手がけるようになり、「ちょうさ最中」、「梨の郷」、「わた所」、「綿まんじゅう」といった豊浜ならではのお菓子が並んでいます。

「ちょうさ最中」はちょうさをかたどったもなか。「梨の郷」は、缶詰の梨が入った白あんが上品な洋風の菓子。「わた所」は、第20回全国菓子大博覧会(全菓博)名誉大賞を受賞した菓子で、“ムサシ”と呼ばれるもなかの皮より高級な白い皮に、あんがはさまれています。「綿まんじゅう」は第21回全菓博で会長賞を受賞した、白くてかわいい饅頭。息吹島でとれたエビを素材にした「海老せんべい」も有名で、第32回全菓博で金賞を受賞しています。豊浜には、おいしい菓子がまだまだあります。「おいり」という嫁入りの菓子もこの地で長く愛されてきました。豊浜では、路地をのぞいて、菓子店に入ってみてください。

問い合わせ:南樟堂 電話0875-52-2255

最高峰の白みそ ~香川県産レタス・さぬきうどんにもどうぞ~

「南樟堂」からそう遠くないところに、昭和6年創業の「イヅツみそ」があります。讃岐では、正月の“あんもち雑煮”に白みそを使うため、工夫を凝らしたおいしい白みそが作られてきました。その讃岐の伝統ある麹づくりを今に受け継いだのが白みその最高峰「イヅツ白みそ」。上質な国産米と厳選した大豆を原料に、食の安全を守る衛生的な設備、腕の良い職人の技が生んだみそは、これまでに数多くの賞を受賞しています。

白みそは塩分が少なく(普通の赤系みその半分以下)、米麹が多い甘みそ。そのため、赤みそとの合わせみそ汁や、酢みそなどの和えもの、また、香ばしい風味を味わえる魚や肉のみそ漬けにもおすすめで、田楽、土手鍋、豚汁にも最適です。白みそとマヨネーズを2:3で合わせたドレッシングは、香川県産レタスにぴったり。また、ダイコンや油揚げを入れたみそ煮込みうどんも最高です。ぜひお試しください。ほかにも、長期熟成の麦(赤)味噌、田舎(麦赤粒)、本造り、ゆず入り、はと麦入りとある金山寺みそなどを販売しています。

問い合わせ:(株)イヅツみそ 電話0875-52-3030

道の駅「とよはま」

豊浜を訪れる人が、必ずといってよいほど立ち寄るのが道の駅「とよはま」。大野原ICから車で約10分、川之江ICから車で約10分のところにあり、燧灘(ひうちなだ)を一望できます。その昔から、このあたりのニレの大木の下で、旅人が一休みしていたそうで、現代の道の駅には、海辺のウッドデッキ、足湯コーナー、産直市、物産コーナー、そしてレストラン「浜っ子茶屋」があります。

海辺のデッキからは、沖に浮かぶ、イリコの島「伊吹島」が望めます。ここで潮風に吹かれていると時間の経つのも忘れそう。海に沈む夕陽の美しさも定評があり、足湯コーナーは長旅のドライバーにも大好評。隣同士で、思わぬ旅のふれあいも生まれます。外には産直のコーナーもあり、新鮮野菜や鮮魚などの海産物にも出会えます。揚げたての「じゃこ天」の実演販売もあります。この味を覚えるとやみつきになりますよ。館内にはいると、ちょうさのオブジェが中央にど~んとあり、今回ご紹介した豊浜の名物やおいしいものが、いろいろと並んでいます。ちょうさのミニチュアなんていうのもおみやげで売られているのです。

さぬきうどんの珍味

次は、レストラン「浜っ子茶屋」に入りましょう。ここには、うどん王国香川県でも珍しいうどんメニューがあります。それは「さつまうどん」。チヌ・鯛などを焼いてその身をほぐし、その骨などからとっただしに赤みそを加え、混ぜ合わせます。郷土料理のさつまは、これを麦飯などにかけて食べます。ですから「さつまうどん」は、うどんの上に、たっぷりと魚のすり身がかかっているわけです。ヘルシーなうどんメニューで味は最高。忘れられないさぬきの味「さつまうどん」です。また、「ぶっかけあなご天」は、ぶっかけうどんにあなごの天ぷらがのっています。これもおすすめの人気メニューです。

問い合わせ:道の駅「とよはま」電話 0875-56-3655

香川県の西の端、夕焼けが心にしみる秋の豊浜。祭ムード高まる豊浜は、瀬戸内海の新鮮な魚料理の店をはじめ、まだまだおいしいスポットもたくさんあります。また、歴史のある土地ならではの神社仏閣も多いところです。秋晴れの空の下、歩いてみませんか、心豊かになる豊浜を。